2026年、住宅工務店に3つの異変
出典:ダイヤモンド・オンライン(2026年)
前受金が命取りになる構造
「B to C」「前受金」の業界の中でも、住宅工務店の資金構造は特殊です。お施主様からの工事前受金で資金繰りができてしまう業界——つまり、「先行してもらっている」のに「資金危機」に陥るのは、赤に近い黄色信号です。
万一があると、地域の一般消費者を巻き込みます。役員は家族ごと引っ越さなくてはならなくなった事例を散見しますし、従業員は「怖くて施主がいそうな場所には近寄れない」という気持ちになるといった、心に大きな傷を負います。
いよいよ打つ手がなくなると——新規のお施主様に通常1割の契約金を5割先行してもらうという、絶対にやってはいけない禁じ手に至ってしまいます。
まだ余裕がある今、先の資金繰りを明確にし、対策を打つ時です。
住宅工務店の資金繰り管理 2つのポイント
ポイント① 日繰り表と3種の資金繰り表(月繰り表)
多くの工務店で見る資金繰り表は、到着した請求書を基に足し算・引き算した日繰り表です。その月の分=1ヶ月分しか作れていない工務店が実は多い。それでは工務店経営には足りません。
私は90日程度の日繰り表を用意することを強く推奨します。
2025年の「4号特例の縮小」以降、契約から着工まですごく延びたという工務店もあったと聞きます。契約から竣工まで9〜10ヶ月が標準という工務店も多いのではないでしょうか。そんな実情もあるので、工務店で作る資金繰り表は12ヶ月先まで見据えたものでなくてはならない——私は断言します。
日繰り表の他に必要な月繰り表は3種です。「契約済みのみ」の他に、①契約をどのランクまで取ればどうなるか、②資金繰りを保つために必要な契約はいつまでにいくら必要か——この3つが揃って、工務店経営者は先手を取って経営に専念できます。
ポイント② 粗利の予実管理
1物件あたりの受注金額が大きく、2〜3%の狂いでも——それが多数の現場で起こっていたら——年間でかなりのロスが生じます。資金繰り管理の基礎は損益管理(粗利管理)です。
工務店の現場別粗利管理は、大きく3つの工程で「想定した粗利から狂う」が発生します。資金繰り管理担当者は実行予算の粗利把握から途中経過(上棟時のズレ等)を随時把握し、決着粗利の予想を変えていく=資金繰りの予想を変えていく——のでなければ、竣工前後で「こんなに払うはずじゃなかった」という予想外のダメージが生じます。
工務店の社長は「営業出身系」と「設計・監督出身系」に分かれます。問題は前者——営業出身の社長に、積算を経由せずに客出し価格を決めるという習慣がしばしば見られます。原価が見る見る間に上がるこの未曾有の状況で、「積算を経由せずに」は命取りになりかねない。「原価の上昇が読めない。工期が延びるかもしれない」という危機を、施主の理解を得ながら乗り越えてほしいと思っています。
「前もって動く」ために——今すぐやるべき3つのこと
何ヶ月先まで見えているかが、打てる手の数を決めます。「足りなくなってから動く」では遅い——前受金に依存する工務店は特に、常に12ヶ月先まで更新し続ける資金繰り表を持つことが基本です。
中小企業向けのセーフティネット保証(中小企業庁)や日本政策金融公庫のセーフティネット貸付は、経営状況が良いうちに申請することが鉄則です。ナフサショックによる原価上昇が続く今、融資枠を「今のうちに」確保しておくことが選択肢を広げます。Properlyは融資申請のための資金繰り資料づくりも全面支援します。
工務店を守るために、工事請負契約書の内容を今一度見直すことをお勧めします。特に「資材価格が一定以上上昇した場合の費用増分に関する取り決め」「工事中断・中止時の費用精算の範囲に関する合意」——弁護士等の専門家と相談しながら整備を検討してください。倒産リスクが高まる業界環境では、合意書は経営者としての誠実さの表れでもあります。
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