このシリーズで解く3つの誤解
誤解①経理担当者なら、資金繰り管理もできるこのページ

「うちの経理に任せているから大丈夫」——この一言の裏に、構造的な問題が隠れています。経営歴の長さや会社の規模に関係なく、繰り返し起きている誤解です。

誤解①
経理担当者なら、資金繰り管理もできる

そもそも、資金繰り管理を学ぶ場所がない

突然ですが問題です。簿記1級、税理士試験、公認会計士試験——この3つの試験のうち、「資金繰り管理」が科目にあるものはどれでしょうか。

答えは「どれにもない」です。 簿記は最上位の1級でも、資金繰り管理は科目に含まれません。税理士試験も、公認会計士試験も同様です。

「税理士さんならできるでしょ」というのも、よく聞く誤解です。試験の構造上、学んでいないのだから仕方ない話です。

なお、「銀行向けの資金繰り表」は別です。融資審査を通すための書類には一定のフォーマットとコツがあり、これは税理士でも作れます。ただし、それは「会社が自分の経営判断に使うための資金繰り表」とはまったく別のものです。融資が通れば終わり——の表と、毎月の経営判断に使う表は、目的も設計も違います。

財務と会計は、本来別の人間がやるべき仕事

財務(お金を動かす)と会計(お金の動きを記録する)は、本来は別の人が担当するべき仕事です。なぜか——お金を動かす人が、その記録も管理すると、不正が起きやすくなるからです。

「長年勤務していた経理担当者が着服」という報道が定期的に出るのは偶然ではありません。しばらくの間バレにくい構造が、そこにあります。上場企業では財務と会計を分けることが原則です。

ただ、「じゃあ財務担当を1人、会計担当を1人」と言っても——中小企業にそんな余裕はありません。仮に雇えたとしても、中小企業の財務担当には、フルタイムで埋まる業務を割り当てることはなかなか困難だと思います。

Properlyからの提案
社内で財務担当者を一人雇うほどではない。けれど、資金繰り管理を社長一人で抱え続けるには重い。その中間にある選択肢が、外部の財務担当者を使うことです。私は、その役割を担っています。

入金管理はできる。問題は「支払管理」

資金繰り管理の構造——入金管理と支払管理

支払管理は、会社全体を横断的に把握していないとできない

支払予測を立てるには、経理の知識だけでは足りません。会社のビジネスそのものを理解していないと始まらない。

社長ご自身でも会社全体の状況をリアルタイムでつかむのが難しい——そういう会社は珍しくありません。その状況で、経理担当者だけに正確な支払予測を求めるのは、かなり難しい話です。

建設業で言えば、請求書が届いた後の「これ、どこの現場の仕入れ?外注?○○って地名だけ書かれたってわかんないんだけど!」という経理⇔現場監督間の混乱が定番の光景です(こういう時は工事番号が役に立ちますね)。山のような紙の帳票を渡されても、それを整理するだけで疲弊して終わる——そうなると支払予測など夢の話です。

資料が揃ったとしても、それを「支払予測」に落とし込むには、さらに経験とスキルが問われます。多くの業種・顧客を渡り歩いた経験——そんなキャリアを積んだ経理担当者が自社にいる可能性は、どれほどあるでしょうか。

これは「奇跡の掛け算」を求めている

中小企業の資金繰り管理が機能するには、二つのことが同時に必要です。

① 社長が強くリードして、社内整備を進めること
「情報が経理の欲しいときに・欲しい形で届く仕組みを作る」——忙しい社長は、その設計や手配を経理担当者に任せたくなります。気持ちはよくわかります。しかし多くの場合、社内フローの変更には社内の抵抗勢力が伴います。「なんでそんなこと経理に報告しなきゃいけないの?」という空気です。だから経理担当者には、社長の強い後ろ盾が必要なのです。

② 経理担当者に、資金繰り管理の勘所・技術があること
学ぶ場所はどこにもありません。近くに教えてくれる人がいれば、それはかなりのラッキーです。

どちらかが欠けても、機能しない。両方が揃っているのは——正直なところ、多くの熱量を要します。

Properlyからの提案
この掛け算を、外部から一緒に整えることはできます。社内の情報の流れを確認し、資金繰り表の設計と運用を並行して進めることで、「いつかできるようになる」を待つより、現実的に前へ進めます。

3つの誤解に気づいたとき、選択肢は2つです

数字をプロに引き取ってもらう。あるいは、担当者を育てる伴走を頼む。どちらが御社に合うかは状況によって違います。ただ確かなのは——

数字が見えると、人は動けます。話せます。一人じゃなくなります。

佐藤崇

合同会社Properly 代表 佐藤 崇

大手税理士事務所に10年勤務後、東証一部上場の投資会社で事業再生の財務担当者として中小企業に内側から入りました。「もっと早く動いていたら、救えた」という場面を繰り返し見てきた経験が、この仕事の原点です。

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